有水晶体眼内レンズ
有水晶体眼内レンズ(Phacik IOL) とは?
一般的に言う眼内レンズとは、白内障のために濁った水晶体を取り出してその後眼内に入れるレンズのことです。(→白内障手術)
有水晶体眼内レンズ(Phacik IOL)は、近視や遠視、乱視を治療する目的で、水晶体のある眼に入れます。目の中にコンタクトレンズをするような感じと言うとわかりやすいでしょうか。目の中のどこに入れるかによって、以下のような後房レンズ、前房レンズに分けられます。
後房レンズ:ICL、PRLなど
後房(眼内の虹彩の後ろで水晶体の前の部分を言います)に挿入するタイプの有水晶体眼内レンズで、ICL: Implantable Contact Lens(STAARsurgical社)、 PRL:phakic refractive lens(CIBA Vision社)などがあります。
ICL
PRL
眼内レンズ挿入時に水晶体に接触したり、眼球と挿入した眼内レンズのサイズが合っていないと水晶体混濁が始まり白内障を起こしたり、眼圧が上昇する緑内障を起こしたりします。
現在後房レンズで主に用いられているのは、STAAR Surgical社のICLです。このレンズは、1993年にヨーロッパではじめて採用され、1997年にCEマークを取得しました。日本では、2010年2月に日本で初めて承認を取得しています。
強度近視、強度乱視にも対応する幅広いレンズバリエーションがあり、有効性、安全性に関する多くの報告があります。角膜を削らずに眼内にレンズを挿入して視力を矯正するため、収差の増加が少なく、コントラスト感度の低下が生じません。
前房レンズ a.虹彩支持型:ARTISAN、ARTIFLEX
目の中の虹彩よりも前で角膜より後ろの部分を前房と言いますが、この前房の中に入れる眼内レンズを前房レンズと言います。
前房レンズには虹彩支持型と隅角支持型の2種類があります。
虹彩支持型というのは、虹彩に眼内レンズを固定するタイプのことで、オランダのOPHTEC社が開発、発売しているARISANや ARIFLEXがこれに相当します。同じ前房レンズの中の隅角支持型に比べて合併症の発生が少なく、隅角支持型や後房型のレンズで合併症を起こして摘出したあとに入れるレンズとしても使用されます。ということは有水晶体眼内レンズの中で今、元も安全なレンズと言えると思います。
この手術を行うには、OPHTEC社が主催するコースに参加して手術のcertificate(免許証のようなものです)を取得する必要があります。正式に登録されたARTISAN-Userの眼科医は、福山会里子が取得した際には日本人で5番目でしたが、現在Artizanのcertificateを取得する眼科医は年々増えてきています。
2003年OPHTEC社がオランダの本社で主催するcertificate取得コースに参加
また、3.2mmの小さい創口から挿入可能なシリコンレンズであるARTIFLEXを使用するためには、更にARTIFLEX UPGRADE COURCEを受講する必要があります。2005年のESCRS(リスボンにて開催)の際にこのコースを受講して参りましたので、福山眼科ではARTIFLEX挿入手術も開始し、この手術を受ける方も増えてきました。
ARTISAN(204左、202中、206右)
ALTIFLEX
前房レンズ b.隅角支持型:AcrySof、ICARE、VIVARTE、PHACIC6など
前房タイプのうち、隅角(虹彩の根部と角膜の間の部分)に眼内レンズのハプティック(眼内レンズを固定するために眼内レンズから突起している部分)を挿入して、眼内レンズを固定するタイプのものを言います。
AcrySof(ALCON)、ICARE、VIVARTE(CIBA Vision)、 Phakic6(Ophthalmic Innovations International INC.:Oii) )などがあります。
挿入した眼内レンズのサイズが眼の大きさにフィットしていないと、眼内レンズが大きければ眼球を眼内レンズの長軸方向に押してしまうために、虹彩の楕円形化やそれに伴う虹彩と眼内レンズの癒着、虹彩の萎縮が起こります。
眼内レンズが眼球に対して小さいと眼内レンズが眼内で回転してしまい、虹彩炎、眼圧上昇などを惹起します。
このような合併症を起こしてきた場合、サイズを変えるかもしくは虹彩支持型レンズのARTISANに交換します。
PHACIC6
ICARE
後房レンズ:ICL、PRLなど
後房(眼内の虹彩の後ろで水晶体の前の部分を言います)に挿入するタイプの有水晶体眼内レンズで、Visian ICL:intra collamer lens(STAAR社)、 PRL:phakic refractive lens(CIBA Vision社)などがあります。
眼内レンズ挿入時に水晶体に接触したり、眼球と挿入した眼内レンズのサイズが合っていないと水晶体混濁が始まり白内障を起こします。
ICL
PRL
ARTISANとは?
もともとは白内障手術後の無水晶体眼へ挿入する虹彩支持型の眼内レンズとして、1978年 オランダの眼科医Dr. Jan Worstによって開発されました 。
彼はこの眼内レンズを研究・開発・製造・販売するために、OPHTECという会社を作りました。その後、下に記載したように、近視用レンズの開発、小切開から入るレンズの開発などを継続なさっています。
現在でもその会社の経営に携わり、ARTISANが良心的なユーザーによって正しい使用法をされるように見守り続けていらっしゃいます。また、ご自身でもOPHTECの会社横に併設された眼科で、ARTISANの手術や診療を行っていらっしゃいます。
ARTISANの手術を受けるのはどのような眼?
LASIKなどのエキシマレーザーによる屈折矯正手術を希望して来院されたけれど、エキシマレーザーの手術適応でなかった方、例えば角膜の厚さがエキシマレーザーの手術を受けるには薄いとか、角膜に疾患があってエキシマレーザーの手術に向かない(円錐角膜、角膜の変性疾患、角膜ヘルペス罹患後)などが主な対象となります。
しかし、エキシマレーザー手術後の眼よりもコントラスト感度等の視機能がよいことが判っていますので、これからはその適応についても変わってくるかもしれません。
一般的には、エキシマレーザーよりも矯正精度が落ちるために術後の裸眼視力のでかた、例えば1.0以上でる確率とか、はLASIKのほうが優れていると言われています。当院でARTISANの手術を受けた方は、すべて裸眼で1.5の視力を獲得なさっています。
ARTISANの手術はどのようにしますか?
角膜又は強角膜に作成した切開創からARTISANを挿入して虹彩にクリッピングします。
日帰りの手術で行いますが、エキシマレーザーの手術と違って眼内の操作を伴いますので、通常は片眼ずつ日を変えて行います。
施設によって方法が異なる場合がありますので、詳細は手術を受ける希望の施設にお問い合わせください。日本には正式に登録されたARTISAN-Userの眼科医は2005年9月現在12名います。
ARTISANって安全?
ARTISANは、もともとは、1978年 Dr. Jan Worstが無水晶体眼用IOLとして考案したレンズで、眼内への移植の実績は27年間であり、その有用性・安全性は多くの学会でも報告されています。
- 近視用PIOL: 1987年 使用開始
- 2004年4月 FDAが承認
- 遠視用PIOL: 1996年 使用開始
- 乱視用PIOL: 1999年 使用開始
- ARTIFLEX : 2002年 使用開始
- Foldable 2005年 提供開始
このレンズの臨床データやアメリカでの治験データなどはOPHTEC社のホームページで見ることができます。